バーチャル万博はなぜ注目されないのか?

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この記事は、大阪市夢洲で開催されているリアルの万博そのものに向けられた批判等を主に扱う記事ではありません。なお、私はリアルの万博に対する批判や意見については可能な限り中立的な立場を取っています。また、当記事を含め当サイトの全記事は収益化をしていません。

みなさま、2025年開催の万博、大阪・関西万博に興味はありますでしょうか?開催に際して、賛否両論様々あり、国民の話題を集めております。

そんな中で、ひっそりとオープンした「バーチャル万博 ~空飛ぶ夢洲~」。2025年4月3日からプレオープンし、4月12日の開業に合わせて本格的に運用を開始しました。

バーチャル万博~バーチャル会場~ | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
2025年の万博、日本、大阪・関西で開催!テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。

今どき流行りのメタバースって感じですよね。iOS/iPadOS (16.0以上~), Android OS (11以上), PC (Windows, MacOS/Apple Siliconのみ), Meta Quest (2以上)から専用アプリを用いて入場することができます。

ところで、このバーチャル万博、リアルの万博以上に、なぜか注目されていません

バーチャル万博の認知度の低さ

Xでは万博開始一週間後の4月19日にVTuberの柳透さんが「なんか全然話題なってへんけど」と言いながらもバーチャル万博の存在を発信されて、ようやくソーシャルVR界隈にも浸透したっぽいように見受けられます。

その人気のなさは、データからも感じ取ることができます。

これは2025年5月6日現在、Google Trendsで「バーチャル万博」と「万博 パビリオン 予約」というワードで検索トレンドを比較した表です。万博に行ったら(少なくとも多くのパビリオンを回るためには、実質的に)ほとんどのパビリオンが予約必須ですから、これでバーチャル万博の参加者とリアルの万博の延べ参加者の比率がなんとなくわかる気がしますが、明らかに何十倍もの差が開いています。

ちなみに、これに関しては、憶測になりますが、せっかく言った万博で予約が取れないので、事前予約に落ちたり予約したいパビリオンがいっぱいあったりするので当日予約を取りたい人が悪あがきして検索しまくっているという可能性も捨てきれません。だからむしろこの比較は不適切かもしれませんが、にしても少ないと。

そして、2025年5月6日現在、Google検索での各ワードのヒット数は、

  • 「万博 パビリオン 予約」: 約 570万件
    • 「万博 パビリオン 予約 2025」: 約 1390万件
  • 「バーチャル万博」: 約 426万件

でした。これらの結果は5月末になっても特に変わりはありませんでした。

万博のパビリオンの予約は公式サイトとは関係ないところ、Peatixなどで行われているものもあり、その分いくらかヒット数が増えているという兼ね合いもあるのでしょうが、にしても人気ない。

このデータからも、一般の関心がバーチャル万博に向いていない可能性が読み取れます。むしろ供給過多でせっかく作ったのに閑古鳥になっているのかもしれません。リアルの万博への興味は増えつつあるようですが、バーチャルはそれほどといったところでしょうか。

そんなバーチャル万博ですが、私は万博旅行に行く下見も兼ねて、バーチャル万博を訪れたところ、いろいろと思うことがあったのでここに書かせていただきます。

私はWindows版、Quest版(PCVR版のほうではなく、スタンドアローン:Meta Horizon Storeでダウンロードする無印VR版の方)、iOS版で実際に動作を体感し、まとめさせていただきました。

バーチャル万博のいいところ

いきなりネガキャンをするのもよくないので、まずはいいところから紹介させていただきます。

1. 無料!

なんといってもこれが最大のメリットです。会期中何度でも無料で入れます。

現地チケットの値段は、一日券では7500円となっています。さらに、会場内での食費はインバウンド価格、大阪周辺のホテル代はコロナ前と比較しても倍以上に高騰しているといった状況ですので、そんな支出を避けて万博に参加できる手段があれば、ぜひ使いたいですよね。

バーチャル万博は、要件を満たすスマートフォン、PC、Meta Questをお持ちの方なら誰でも気軽に会期中はどこからでも参加できるわけです。

2. 万博のスケール感が実感できる

万博会場の総面積は約155ha(東京ドーム約33個分)あり、大屋根リングは直径(外径)675m、一周2kmの壮大なスケールとなっており、180を超えるパビリオンが参加しています。その広大な敷地を再現している仮想世界にアクセスすることは、大まかな規模感、会場の広さを知るのに最適なツールと言えるでしょう。

ただし、バーチャル万博のメインの島々の各区画は島で離れており、会場全体の大きさが直感的に理解できるものとして配置、統合されていない点については注意が必要です。一部のワールドについては大屋根リングの位置の上空に透明なリングが宙に浮いてありますので、一応スケール感はお分かりいただけるんじゃないかと思います。

3. だいたい混んでない

ほとんどの場合において、アクティブユーザー数に対して、最大入場可能人数ははるかに多く設定されていることが多いでしょう。リアルでは休日に行くことて激混みに揉まれる可能性がありますが、バーチャルではそんなことはありません、混雑知らずです。

ワールドごとの入場者数(バーチャル万博全体の入場者数ではなく、各ワールド:島やパビリオンなどの入場者数)は、一つのワールドにつきせいぜい100~200のキャパシティがあるように思いました。第一、ワールドやユーザーの端末の問題で処理落ちする可能性はありますので、とりあえずバーチャルライブに対応させているぐらいの気持ちで臨んでいいと思われます。なお、相当近づかないと他のキャラクターのアバターが表示されないようになっているため、処理はなるべく軽く済むように、限られた時間の中で、さぞ血のにじむような努力を行ってきたものとおこなわれております。

特に、初期スポーン地点である歓迎の島や出会いの島は混雑時には50人くらい入っても大丈夫らしいみたいなので、仕様としては割と余裕をもって設定されているように思います。

また、万博の一部パビリオンは、予約が必要なところが多いです。こうした人気パビリオンも、混雑・待ち時間知らずで入場・体験することができます。例えば、落合陽一さんのプロデュースするnull²(ヌルヌル)は、抽選倍率が30倍もある人気パビリオンだとしてニュースになりました。

私自身はバーチャル万博のみでこの展示を体験しました。空間の中をマイクラのクリエイティブモードのように上昇、下降できるという独特のギミックがあったのが面白かったですが、鏡状の立方体や落合陽一アバターを用いたデジタルネイチャー体験について特に共感や感動、わざわざ現地に行きたいという気持ちを覚えられなかったです。このように、現地で見られるパビリオンが限られる際には有効な選択肢となるものかと思います。

4. 万博IDを取らなくてもいい

万博のチケットを予約するには万博IDが必須となりますが、バーチャル万博には万博IDなしで入れるオプションがあります。万博IDを執拗に叩いている人がいますが、そんなに嫌いならまずバーチャル万博から入ったらいいと思います。

万博IDは、バーチャル万博内でセッションの内容(具体的には、あるユーザーがどこを訪れ、どこにいて、何のアバターコスチュームを着用・保有しているのか)を保存するために活用されています。万博IDにログインしない状態でバーチャル万博を起動すると、毎回利用規約を読まされて同意することを求められる可能性があります。その手間をかけてもいいのなら、十分選択肢に入るでしょう。

5. バーチャルならではの展示がある

会場内では、3D空間を生かした演出が多くのパビリオンでなされています。いいワールドに行けば、メタバースならではの没入感・体験・ストーリーを楽しむことができるでしょう。私はすべてのワールドを巡っていないので何とも言えませんが、特に今までにメタバースの実績があるような有名企業のパビリオンや、技術やエンタメに強い国・お金をかけてそうな国のパビリオン、いのちの森の島にあるアーティスティックなパビリオンは、クオリティが高い、気合が入っているものが多い傾向にあります。

ただし、各パビリオンのクオリティについては、玉石混交といった印象を覚えます。有名企業等であっても、あまり頑張って制作してなさそうなところは正直ありますので、あまり期待しない方がいいと思います。

特にVRという選択肢がある方は、まさに一人称視点で会場の中にいるような気分で楽しむことができます。であったり、プレイアブルキャラクターそのものやVRで言う自分の身体と、大屋根リングやパビリオンの建物などとの距離感を感じることで、距離感の直感的な理解や会場の予習につながります。それを最大限味わいたいという方には、Meta Questはいい選択となるでしょう。

また、AR・VRを活用してリアルイベントと連動したイベントが開かれている点も興味深いです。例えば、私がインした際には巨大ミャクミャク出現イベントが開催されていました(割といつも開催されているものと思います)。ログインしていればなにか期間限定のイベントを見つけるかもしれません。

6. 遠く離れた土地からでも同じバーチャル会場にアクセスできる

これはメタバースの利点ですね。テキストではなく万博の3Dデータ上で同じ空間の共有を行うことで、セッションIDを共有することで、遠く離れた友人・ネットの知り合いなどと一緒に世界を探索できるようになるかもしれません。

ただし、バーチャル万博では、「VRChatのようにワールドのインスタンスを生成する (Create New Instance)」のようなことは基本的にはできず、自動的に調整されて、ほとんどの場合で不特定多数の人と同じワールドに入るので、注意が必要です。通話したいフレンドがいる場合、Discordなどを使うのが妥当、といったところでしょうか。知らんけど。

また、エモートやチャット機能がありますが、ほとんどの人にとってこの機能が必要なのかは謎です。万博ではVRChatのように不特定多数の人と喋り合うみたいな空気感は醸成されないと思うし、ライブイベントもやってるんだかやってないんだかよく分かりません。

バーチャル万博のよくないところ

しかし、バーチャル万博は、課題も少なくありません。感想は上から順に「いいところ」と概ね対応している順番となっています。

1. ロード時間が長い

まずこのアプリは、何かにつけてロードします。ワールド遷移のたびにダウンロードと表示に時間をかけます。正直これはたくさんのワールドがあってその全て(シーズンごとのバージョン違いも含めて)を初期段階で読み込ませるのは無理なので、このような実装にしているものと思われます。

この辺りの話はメタバース全般に言えるかもしれませんが、ワールドごとに軽いところでも3~5MB、重いところだと100MB~200MB、あるいはそれ以上のファイルサイズがあるかもしれませんが、新しいワールドに遷移するごとにこれらのファイルを毎回ダウンロードする工程が入るので、煩わしいと感じて辞めてしまうこともあるように思います。既に通ったことがあるワールドの場合は、ダウンロードではなく、ダウンロードしたファイルを表示させる時間(ロード)だけで入れます。ちなみに、バーチャル万博アプリのソフトウェアアップデートが来た際には、インストーラを外部から新しくダウンロードして既存のアプリを上書きさせるので、ワールドのダウンロードがやり直しとなります。(少なくともWindows版では)

このロード時間はどうしても他のメタバース・ソーシャルVRなどでも起こり得ますが、UXとして、毎回ダウンロード後の決定ボタンの押下が要求されるのは煩わしいですよね。

携帯から入る人や通信環境がすぐれないところにいる人だと読み込みが遅くなり、安定的にロードできない可能性があります。ほとんどは待つことと端末のCPU・GPU・通信性能でカバーできますので、まあ無料で提供されていることの引換えだと思いましょう。

2. 広すぎる

これはメリットでもありますが、デメリットもあります。広大な敷地となると、リアル万博はおろか、バーチャル万博でも大量のワールド(とロード時間)があり、必ずしも全ての参加者が会場全体をくまなく見て回ることは不可能でしょう。

しかも、初期スポーンである歓迎の島から、各ワールドの島までマップで飛べるのはいいですが、飛んだ先からかなり歩いてパビリオンのワールドに入り、パビリオン内の別の部屋にアクセスしていくともなると、Webサイトで例えると、各ワールドの島が親ページとした場合、パビリオン内の別の部屋は、導線的に孫ページという扱いになるわけです。孫ワールドとでも言うべきでしょうか。

しかも、親ワールド、子ワールド、孫ワールドにアクセスするたびに世界のロードやワールドファイルのダウンロードがあるわけですから、まさにUX(ユーザー体験)としては、90年代のInternet Explorerや、通信制限(100kbps程度)レベルの貧弱回線さながら、遷移するたびに画像が上からかくかく出てくるみたいな感じになってしまっているわけですよ。普通にホームページで表示してればこんなことにはならないのに。

こうしたロードの多さ、そして立地条件の悪さが、コンテンツが埋もれているといった状況を生み出し、中にはバーチャルの利点を生かせないコンテンツも生み出されているわけです。

「可能なら画像」加えて、バーチャル万博ではパビリオン図鑑という、各ユーザーが通ったパビリオンを記録する装置がついています(さすがに孫ワールド以降はカウントされない)。全パビリオン制覇で図鑑完成&特別アイテムゲット、と広報されていますが、これは大作RPGゲームの完クリレベルに根気がいる作業であることを覚悟しなくてはなりません。このようなものに土日を費やして見て回る人がどれほどいるのかは甚だ謎です。

3. (特にスマホ・Quest端末からの)操作体験が悪い、重い・ラグい(場合がある)

これは万博が一般向けの博覧会であり、どうしてもVRやゲームの操作感になれていない方も捜査する可能性があるため、「こんなの触ったことはないよ」という苦情が出るのは一部仕方がない部分はあると思います。特に、VRヘッドマウントディスプレイであるMeta Questからの操作感はいまだ洗練されていないといった状況。

例えば、ロード時間が長いことはほかの端末でも同等に起こりうりますが、Meta Questはスペック的には割と大丈夫なスペックを兼ね備えてはいると思いますが、UX(ユーザー体験)は断トツで悪いです。

まず、Meta Questで利用規約を早くスクロールする手段がないという洗礼を食らいます。それから、Quest版には、私が確認した限りはダッシュキーがなく、一人称なのでダッシュしている感覚を得にくいです。

なお、Quest版に限らず、利用規約への同意は、万博IDでのログインが済んでいない限り、どの端末からでもアプリが起動するたびに求められますので、ここで出ばなをくじかれていた人も意外といるのかもしれませんが、こんなところで諦めるのは早いと思います。ここで諦める人こそ機会損失です。それにしても何回も利用規約への同意を求める前提で、このQuest版のスクロールの遅さは何とかしてほしいですが。もしバーチャル万博の起動RTAがあるならここでQuest版は大きなデバフとなることでしょう。

また、特に不便だったと感じるのが、視点変更とクリック動作。視点変更は、Questでは右スティックで動作するわけですが、一クリックにつき約45度回転する仕様になっています。そうこうしているうちに、私はVR酔いに耐えかねて30分程度でリタイアしてしまいました。

私はバーチャル万博について、モバイル・PC・Quest版のすべてを試しましたが、ことUI・操作感においてはQuest版よりもモバイル版の方が勝っているような印象です。モバイル版、PC版のUXは特段突っ込みどころはありませんでした。オープンワールド系のゲームをやったことがある人ならすぐに慣れるでしょう。なお、動作は重いですが、いいスペックの端末さえ用意できれば、処理落ちして使い物にならないことはないでしょう。

clusterなどに倣って、iOS, Android, Questにネイティブ対応してくれたのはありがたいですが、いかんせんモバイル開発に比べてQuestネイティブ対応はできる人材も少なければ、まだノウハウも蓄積されていないということで、さすがにUXもモバイルほどに洗練されていない節があるわけです。

ましてや、スマホゲーム・PCゲーム、Questの操作に慣れていない人がいることを考えると、バーチャル万博においても操作体験は万人向けではないと言えるかもしれません。これに関しては正直慣れの問題もある気がします。

また、誰でも気軽に遊びやすいスマートフォン版は、Quest版よりかは処理能力が不足するのか少々動作にカクつきを感じるところが正直あります。どこぞやのソシャゲみたいにスマホ本体が熱くなる可能性も考えられます。とはいえiPhoneの場合はたいてい高性能ですから、既存のスマホで入れるオープンワールドのメタバースと同じようなもので、致命的に遊べないことはないといった印象です。しかし、安定感を求めるならPCでアクセスすることを推奨します。

4. 斬新さがない

VRに限った話で言えば、VRを経験している人はすでにVRってこんなもんかと思うだろうでしょう。いまは万博や新聞だけが情報を得るツールという時代でもなく、ネットで最新の情報にはいつでも触れられる時代です。これに関しては、アンテナを立てていない分野に関しては、意外と知らない発見があったり、意外とアッと驚く体験ができるように思います。知らない国や企業・団体の取り組みを知る機会、まさにそれこそが万博なのです。

まあこの辺りはリアルの万博でも言えることではあると思いますが、「月の石」のようなアッと驚く分かりやすい技術の進歩がなく、すでに世界は「指数関数的な進化が当たり前になっており、それが持続可能な方向にかじを取っているせいで減速しているように感じる」といった状況にあります。その閉塞感がつまらなさと受け取られるのかもしれません。

スーツさんが「未来のネタ切れ感」という言葉で、現代の閉そく感に絡めて万博のつまらなさについて説明していましたが、VRの技術的限界を感じてしまう人はバーチャル万博に限らずどのプラットフォームでも感じてしまうものだと思うので、ただただ新しいものに感動する心が薄れているだけなんじゃないかとも思いますね。

5. 3Dで実装する意味が感じられない

ブースを見て回っていると、どことは言わないながらも、3Dを活かしきれてないような、2D(ちょっとリッチなWebサイト)でいいんじゃね、と思うようなパビリオンも正直ありました。

例えば、今回のバーチャル万博の展示の中に、NTTドコモによる「FUTURE YOUTH CITY」というパビリオンがございます。そのなかの「MIRAI GALLERY」のように、ただらせん状の動線でもってイラストなどを展示する場合でも、VR180などの映像を投影したり、イラストだけじゃなくて没入感や空間的アニメーションが活用されて何とか世界観を演出できてるサイトは、まだメタバースでやる価値はあるのかなと思うわけです。

一方、これを真似して、とりあえず画像や文字を立体的に並べました、博物館のような立体的な動線的なやーつもあります、デザインはこだわってませんみたいな感じの造りになっているパビリオンもあるわけです。正直、これではメタバースの無駄遣いと言わざるを得ません。設計思想もクオリティも大学生の卒業制作レベルです。こんなものはリッチなWebサイトで実装した方が読み込みも速いはずです。

では、リッチなWebサイトの延長でいいんじゃねみたいな風に思ってバーチャル万博から外部リンクを開くと、中身はフロンドエンドゴリゴリのWebサイトですから、端末が露骨に重くなるのを感じるわけです。場合にもよりますが、メタバースを開きながらリッチなWebサイトに遷移して開こうとするのは推奨される行為ではありませんね。

6. UGC共有について厳しい規約がある

昨今は、誰もがSNSや動画媒体などで情報を発信するUGC(ユーザー生成コンテンツ)の時代になって久しいです。リアルの万博では、原則非商用に限り写真、動画の撮影は基本的に許可されていますが、バーチャル万博では商用非商用問わず動画共有は規約上できません利用規約によって許可されているUGCはただ2つ、キャプチャ画像とプロフィールカードだけで、個人のSNS掲載に限ります。また、バーチャル万博アプリについて、「許可なしにメディア掲載はNGとなります」ということで、当記事からのマネタイズはしていないものの、念のため本ブログでは(サムネイル画像を除き)バーチャル万博内で撮影した画像は一枚も掲載せずに説明してまいりました。

これは、動画を撮られると人の声や音楽が入ってしまい、現実のように著作権の映り込み規定も適用し難いので参加者や出展者の権利を守るために一律禁止ということなんでしょうが、時代遅れ・保守的な感を感じずにはいられません。

リアルの万博でも、突発的な発煙に対してメディア報道陣に対し「撮影NG」という通達がなされたことに対して「都合の悪いことは隠すってか」と批判されたことがあります。これに関しては、当局が規約に則って、万博敷地内で撮影された映像の無断での商業利用を禁止するという趣旨の内容を伝えたということなのでしょう。万博という公共性・公益性の高いイベントの撮影機会は公平に与えられるべきなのに、未だ中央集権的なやり方には古臭さを隠しきれません。JASRACに似てますけど、正味これのおかげで救われている人もいるでしょうし一概には言えないんでしょうね。

このノリどっかで聞いたことあるなあと思ったら、展示会や、企業向けメタバースのノリですよ。商業的なメディア取材は中央集権的に管理されています。プライバシー保護やビジネス的交流を重要視している場においては、企業や個人のUGCに対しては積極的ではなく、一般参加者が多いからお情けで一部を許しているといった状況。同じく万博に合わせて自前でメタバースを作っているKDDI αUメタバースではバーチャル万博とは別プラットフォームになりますが、(特別な許諾のない)動画の撮影は遠慮していただいているとのことです。

バーチャル万博の動画はほとんどなかったですが、YouTubeなどでは、現実の万博の映像を、万博協会当局に許可を得ずにアップロードされたと思われる動画も見受けられまして、それに広告がついているかは分かりません。個人が万博敷地内、バーチャル万博内の撮影に際して何らかの形で許可を取らないといけないのも困難ですよね。このルールがどれほど周知されているかはよく分かりませんし、厳密にはどこまで守られているかも謎です。参加者(リアル・バーチャル問わず)はおろか、なんとベンダーですら厳格なルール運用がなされていないように思います。

その証拠に、NTTドコモのFUTURE YOUTH CITYのFAQを見てみると、

Q:ドコモルームで写真/動画撮影はできますか。

A:スマートフォンでのスクリーンショット、PCやVRゴーグルでのキャプチャなどの写真/動画撮影は全ルームで可能です

よろしければぜひ「#FUTURE_YOUTH_CITY」のハッシュタグをつけてSNSなどにご投稿ください。
なお、以下の行為はご遠慮ください。
・営利目的、著作権侵害、名誉棄損につながる撮影と公開
・他のお客様のご迷惑になるような撮影
・撮影者と無関係なお客様および特定のスタッフのプライバシーを侵害する恐れがある撮影と公開
・各SNS利用規約や法令に違反する行為
・社会的マナーに違反する行為

あれ?NTTさん?非商用であっても動画撮影は禁止じゃなかったんですか?というわけなんですね。完全に撮影規定に関して親(バーチャル万博アプリ提供者:万博協会当局)と子(パビリオン提供者:NTTドコモ)でちぐはぐです。ドコモ側が動画共有は原則禁止というのを知っていたとしても、こちらの文面からは、動画共有を奨励しているようにしか見えません。

まさにどちらが優越するか分からないという、オーバーライド問題が発生しています。限界まで足掻いたバーチャル万博は想像よりも狂っているらしいですねえ。

バーチャル万博が注目されない理由

これらの背景もさることながら、バーチャル万博がまだ比較的「知る人ぞ知る存在」となっているのは、バーチャル万博の存在自体がそこまで調べられていないということもありそうです。

そもそも万博の解像度が低く、興味もなくて諦めているという人が特に非関西圏在住者を中心にメタバース関係者やソーシャルVRの愛好家の中でさえもあまりいない。しかもニュースサイトやSNSを開けば万博のネガキャンがあって、リアルで盛り上がりに欠けているどころか悪い印象が流れているというわけです。もちろん、万博にいい印象を持っている人も大勢いるでしょうが、それらの人の一部からもバーチャル万博の存在は気づかれていないかもしれません。

一応万博ホームページのトップページに「未来社会ショーケース」の一環としてバーチャル万博の名前と画像が紹介されていますが、そこまで調べる人がいない、いても回線やスペック、メタバース・PCゲームの動作感覚の問題などで入ることをそもそも諦めてしまう人もいるかもしれません。

それに加えて、上述のデメリットがあります。特に私がマイナスポイントだと感じているのが、UGC共有に関しての厳しい規制です。今どきはなんでも、みんな動画撮影して投稿しているわけじゃないですか。そこが制限されているのは、首根っこをつかまれているような気分です。

バーチャル万博の可能性

バーチャル万博は、万博の魅力を新たな形で体験できる万博史上初の試みですが、技術的な課題や認知の問題があり、完璧なものとは言いがたい現状です。

しかし、万博ではこれまでも今後の社会で当たり前になるような新しい技術が生み出され展示されてきました。それは今回の大阪・関西万博においてもそうです。

たとえば、ロボット工学者の石黒浩さんは、「いのちの未来」というパビリオンで人型アンドロイドやサイバネティックアバター(人間の身代わりとしてのロボット、人型アンドロイド、バーチャルアバターなどを包摂する概念)を展示しています。

実は、このパビリオンを訪れたほとんどの人は知らないでしょうが、2年前に、夢洲から地下鉄中央線で隣の島に渡ったところにある咲洲のATCでたくさんのサイバネティックアバターを展示していた、「アバターまつり」というイベントがありました。

以前そのイベントに行かせていただいたこともありましたが、私が訪れたのは3連休後の平日午前だったこともあり非常にガラガラでした。このイベントは1週間ほどの開催でしたが、正直認知度は府内にとどまっている感じが否めず、ショッピングモールに大道芸人が来るみたいなレベルでしょう。正確な来場者数は、私は多くて合計1000人ぐらいだと予測しています。ほかにも、同年に「アバターランド」と呼ばれるイベントを開催するなど、いろいろなロボットアバターなどを世に出す機会をうかがい、試行錯誤していた模様でした。

万博訪問後現地で撮影した「いのちの未来」パビリオンの外観。当万博有数の人気パビリオンであり、私Bundrailは初回の訪問で入場を果たすことができなかった。

片や万博では、アバターまつりとは違う形ですが、全国、いや、全世界各地から人々が訪れます。「いのちの未来」パビリオンだけで何百万という人々に日本のサイバネティックアバターの技術を知ってもらい、50年、100年先のいのちのあり方について思索してもらうきっかけを与えることができるわけです。

リアルの万博の展示を見ての感想はここでは取り上げませんが、同パビリオンはバーチャル万博でも展示を行っております。動画を見せた後、ワールドは隠し部屋のある部屋しかなく、フォートナイトのワールドであるFUTURE OF LIFE TYCOONに遷移します。隠し部屋の暗号はFUTURE OF LIFE TYCOONをクリアするとわかるようです。

FortniteがPUBGのようなFPS/TPSというよりは、VRChatのようなメタバース寄りになっていると聞いたことはあるでしょう。ここは数少ないパビリオン独自のメタバースを用意しているパビリオンのうちの一つですが、Fortniteの島(自由に制作・配布可能なワールドまたは一連のゲーム体験)という選択がなんとも今どきな感じではあります。島の内では、未来の街の市長になって50年後の街づくりを体験できるタイクーンゲームということで、ゲームを通じてはるか未来のいのちの形を想像してほしいという狙いがあるようです。いかに多種多様な年齢層を狙っているかが分かりますよね。

これはゲームの中の話題だからと言って、決して夢物語と割り切ってはいけません。その先駆けとなるアバター、例えばマツコロイドなどのアンドロイドなどが実際に展示されています。そこで展示されている技術は、実際に研究開発や、石黒氏が設立したAVITA株式会社のソリューションなどを通じて、現実社会に実装されようとしています

ロボット工学の研究者やその近くにいる人たちには、サイバネティックアバターという用語は知らなくとも、ロボット技術やアバターの凄さはすでに知るところとなっているところでしょう。今回の万博で彼らが制作したアンドロイドアバターの魅力、技術の進展を初めて知る・知ったという人も多いんじゃないかと期待しております。

このように、万博には新たな技術やアイデアを創造発信し、技術や文化、ビジネスの交流の場として機能することで、経済が活性化したり、それらの技術が今後50年で導入されたりするわけです。

ここで「バーチャル万博」に関しては、今までバズワードとして流れて行ってしまった「メタバース」「VR」という技術に焦点を当てて、国や大阪府を挙げて過去に類を見ないほどに大規模の展示を行おうという取り組みがなされています。

その全貌はアクセスしないと何も評価のしようがありません。内容は時期によって入れ替わるらしいので、会期中はぜひ何度もアクセスして元を取ってみてはいかがでしょうか。

会期は10月までありますので、これからバーチャル万博の認知度が高まることを願っています。

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