4日目は新幹線でまた台北に戻ります。台北に着いた後台湾ドルのお金が足りなくなって両替するのに手間取りましたが、モタモタしつつもなんとか引き出せました。
本題の温泉へ行く前に、最近今年の7月に7月に衛兵交代ではなく屋外での行進パフォーマンスに変更された中正紀念堂へ行きましたので、少しだけ紹介させてください。
中正紀念堂は、台湾観光の風物詩で、中華民国がどのような国であるかを実感するのに最適な場所だと思っていたのですが、街中にポツンと現れる広場、巨大で豪勢な建物であり、そう易々と伝統を変えづらいかと思いましたが、案外政治思想によって簡単に変わるもんでしたね。しかし、蒋介石の巨大な像そのものや、パフォーマンスによって靴や銃の音が鳴り響くのも健在。
パフォーマンスが変わった後も、中華民国に占領された台湾という国の歴史と蒋介石の時代の考え、そして複雑なアイデンティティを今に伝えてくれます。
中正紀念堂の中です。蒋介石の銅像はそのままに、衛兵が乗る台が奥の方に撤去されています。かつては衛兵の交代はここでやっていましたが、衛兵は人気が根強いことからまた違う形で残され、蒋介石崇拝に頼らない台湾のアイデンティティを発揚させようという意気が感じられます。
さて、そこから移動して私は今新北投(シンベイトウ)というところにおります。ここは台湾を代表する温泉地、北投温泉。温泉は日本だけにあるわけではありません。その市街地からの近さと圧倒的便利さから、日本から日帰りで入れるほどに便利な温泉地であります。私は深夜便の桃園発の飛行機で帰るので、割と時間があります。
新北投駅まで、駅舎観察
ここまでは地下鉄淡水信義線で北投まで来て、北投で新北投の支線を走るシャトル列車に乗り換えてきました。北投まで日中は御堂筋線の新大阪〜天王寺までの区間便みたいに5分間隔で出ており、夕陽が綺麗な淡水まで行く列車と合わせて乗客が多い北投までの需要を拾っています。
淡水信義線は6両ですが、新北投支線では専用の3両編成の列車が10分間隔で出ています。正直、混雑度は淡水信義線の方がひどかったです。
駅の横に気になるものがあったので観察。MRTの前にも、新北投駅まで繋ぐ線路がいわゆる国鉄線としてありました。現在はこのように歴史を感じさせる木造の建物として残されています。台北駅から現在の淡水信義線に沿うようにして線路が伸び、台湾総督府鉄道の時代から港湾都市の淡水までアクセスを図ったり、北投温泉に客を誘致しようという試みというのがなされていました。
近くの公園にはプラットフォーム、古い客車が残されていて、台湾の鉄道についても知識を深めることができます。
北投公園・温泉博物館
図書館や旅館が立ち並ぶ旅館を横目に見ながら、北投公園を散歩します。観光客がそれなりに見掛けられます。
公園の中に、綺麗な景色が見える場所があります。手前の建物は温泉博物館。そして温泉博物館のすぐ奥には、日勝生加賀屋の旅館があります。加賀屋といえば和倉温泉の宿はプロが選ぶ日本の旅館ランキングで1位常連という凄まじい宿ですが、残念ながら2024年元日に発生した能登半島自身で被災してしまい、2026年までの営業休止を余儀なくされてしまいました。それでも、この北投でも日本式の最高品質のサービスを提供しています。
温泉博物館はなぜかタダで観覧できます。日本統治時代、この建物は「北投公衆浴場」として賑わっていましたが、昭和天皇も台湾に行幸(厳密には在位中ではなく皇太子時代なので行啓)された際に、皇太子時代にこの公衆浴場を訪れ、また北投石を採掘したと言います。この北投石というのは大量のラジウムを含む硫化物の鉱石です。草津と同じ酸性の温泉で湯の花も取れ、しかもラジウム温泉という特徴的な放射能泉という組成のこの温泉は、ここと他に秋田県の玉川温泉にしかないようです。
タダなのはいいんですが、商用写真撮影禁止とのことでしたので、一応写真の掲載は控えておきます。館内には、北投石の採掘・加工ビジネス、温泉旅館などの娯楽ビジネスの紹介や、公衆旅館の展示として温泉を湛えている様子、歴史や月琴と呼ばれる楽器が弾ける展示が見られました。特に浴場の展示は見ものです。まあ台北市政府パワーで取材OKになっていると思しきスーツさんの動画で紹介されているのでそちらを見てといえばそれまでなのですが…
でも旅は画一的ではなく、人それぞれの経験を求めてやってくるものですからね。
実際に私はインド系の人っぽい父親と娘がいて日本風の銭湯の風景を背景に写真を撮ってくれないかと頼まれたことがあります。英語圏ではない様ですが、思わず台北で国際交流。まあ海外旅行している時点ですでに国際交流なのですが。これから先も、私特有の体験に出会うことになります。
また、この北投温泉というのは、山の奥の温泉も併せると6種類の泉質が楽しめるのが特徴で、硫黄泉・ラジウム泉・炭酸泉・泥温泉などさまざまな泉質の温泉が楽しめて、なかなか面白そうに感じますね。
公衆浴場が閉まっているので、山道を歩いて硫黄谷へ
当初、水着着用の公衆浴場を訪れる予定でしたが、入れ替え中、閉まっています。しかもどうやら規格内のスク水(競泳用水着)じゃないといけないらしく、現在私が持ち合わせている水着は規格外そうなので、一旦離れました。しかも肝心の水着は持ってきたもののロッカーの中のスーツケースに置き忘れているため、台湾のマナーにおいては理論上は入浴不可のはずです。
そこで、山を登ってとあるところへ向かいます。お金の問題もありますから、バスやタクシーには頼りませんでした。確かに歩いて登れるところですが、普通にのがいいと思います。
道中、この光景で見ている以上に急さを感じる激しい坂を通り抜けます。なかなか険しいところです。やはり温泉があると頃には山があるものです。足が棒になるくらいとんでもなく急な坂を登り、標高も100メートル以上上げていきます。
ここは温泉施設ではありませんが、箱根温泉の大涌谷に相当するような観光スポット、白礦泉が湧く硫黄谷(硫礦谷)です。周辺で生えている一部のすすきなどを除いて温泉の酸性の成分が濃く生物の生息には適しないような厳しい環境です。湯温も非常に高いと思われます。
この硫黄谷はかつて硫黄の採掘が行われていたことで知られていますが、現在は石油を生成するときの脱硫という工程で生成できることから硫黄の採掘をやっていません。その代わり、現在は周辺の温泉旅館へのお湯の分配や観光客に素晴らしい景色を見せるといった役割を果たしています。この熱い渓谷の景色はもっと上の方から見ることができて、そこから見たらそのスケール感の大きさにきっと驚くと思いますが、そんなところまで登っていたら日が沈むと思うのでやめておきます。
横には駐車場と足湯がありました。喉が渇いたのでお茶を買い、どこから来たのと聞かれた気がしたので日本人と答えると笑ってくれました。わずか15秒ほどの拙いにも程がある会話でしたが、台湾が親日である事を感じられました。さらに上もあるようですが、今回はやめておきます。
北投文物館
そして山から降りてきて温泉旅館街へ入ると、市街地の手前に何やら日本家屋があります。これは北投文物館という建物です。
この建物は、日本統治時代に高級旅館として建てられたもので、日本や漢民族、原住民の文化財がたくさん保存されています。台北地区唯一の日本家屋として文化的な価値があるということで、台北市の史跡に指定されています。グッズも買えるし博物館という感じですね。
入館料はなぜか50台湾元の学生割引が適用されました。本来は120元払うはずですが、わたしが学生とは一言も言っていないのに、奇跡ですね。中国語で捲し立てられるのは苦手ですが、専用の靴下を履いて見学しなさいとのことでした。なお日本語の音声案内を利用することができるらしいですが、そんなものは知りませんでした。
やはり海外では現地語ができないと苦労するものですが、たまに助かることがあるので英語はやっていて損はないですね。大陸ではより中国語が必要になりそうですが、台湾は英語で乗り切れるかもしれません。英語と同じくらい台湾では日本語も役に立ちますがね。
ここは日本語が通じない日本家屋って感じですよね。美術品の如何とかは、説明も中国語で書いてあってよくわからないのですが、掛け軸とか日本式庭園があるのに、日本人が1人もいないのが不思議な感じです。下に見える黒いのは自分の靴下です。
そして、2階に上がると大きな宴会会場みたいなものがあります。展示は何が何だかよくわかりませんでしたが、確かに日本らしさは実感できたという変な感覚になりました。これも日本統治あってこそですよね。
日本人御用達の北投プライベート温泉
もう18時前です。さて、私は長らく山道を歩いており、これまでの疲れを癒し、風呂の代えとするために、温泉に入りたいと思ったものです。そのような入浴施設の中で、日本人に最も知られているのが春天飯店です。
地熱谷や春天飯店などこの辺りの温泉は、青礦泉という成分の温泉。山の上の硫黄谷で見たのは白礦泉なので、またそちらとは違う組成となっております。白い方が普通の硫黄泉、青い方がラジウム泉らしいです。
フロントのお兄さんにお宅のプライベートバスを利用したいと突撃しまして、私が受付のお兄さんと英語で拙い会話を繰り広げているところ、契約書にサインして電話番号に+81と書いたところ日本語ができるお姉さんが来ました。日本人がよく来ることを知っているのでしょうか、片言ながら案内して下さるそうです。ホテルは非常に空いていました。
本来NT$600のところ、クレジットカードを出したら「JCB Discount」になるということで、NT$420 補助金なのかホテル独自の施策なのかは知りませんがともかく、日本円で言うと2000円足らずで入浴することができて本当に良かったです。RAKU SPAの平日料金より安いですからね。
出ました。もしかしたらこの写真はどこかで見た景色かもしれませんよ。デジャヴってやつですね。ここ以外にもいくつか日帰り温泉のサービスを提供しているところがあるようですが、私もここに複数の日本人YouTuberや口コミ投稿者がここを訪れているのを確認しましたので訪れることにしてみたというわけでございます。だからその動画で見たまんまの部屋だと、聖地巡礼をしたような気分ですね。まあ先ほどの文物館から非常に近いからというのもあるのですが。
この浴槽は、私が確認した限りでは1階に2室があります。予約はできず、当日に空いているか確認することで利用できるようです。また、この浴槽は「雙人客房」と案内が書かれていたのを見るに最大まで2人まで入浴可能らしいことが推測されますが、実態は分かりません。室内には石鹸類、シャワーやアメニティも完備。ペットボトルに入った水、綿棒とフロスが入った清潔セットが入っています。袋をよく見ると「清潔セシト」と書いてありました。こういうのを見ると頑張って翻訳してくれたんだなあとほのぼのしますよね。
注意書きを見ると、撮影が推奨されない(この浴室に関しては聞いたら大丈夫そう?)のはそれはそれとして、この浴室においても規約上は水着を着用して入ってくださいと中国語と英語で書いてあります。そういえば水着はありますかと聞かれました。忘れましたと素直に伝えましたが、このホテルはそういう日本の風習しか知らないおバカな日本人観光客にも理解があるものと思われます、というかそう信じたいです。
なお、このホテルでは水着着用必須の温泉プールやなどのサービスであるとか、そのほかご飯の提供もあって、私が行ったのでいうと木更津のホテル三日月みたいな総合リゾート施設の様相を呈しています。
私は結構調べずに思いつきで行き先を決めている節があるので、もうちょっとちゃんと調べてくれば良かったですね。というか普通に、台湾の温泉は水着が必要と知っていたので、水着を台湾に持ち込んだわけですが、それにも関わらず私は台北駅のロッカーに水着を置いてきたわけですよ。残念すぎでしたが、プライベート温泉ならそんな心配もいりません。申し訳なさを胸に、全裸で入浴します。
やはり、お湯と水と温泉の3つのカランがあって、源泉は熱いですが水をかなり足すことで自分がちょうどいいと思った温度でのびのび入浴できたというのがここの魅力だと思います。なお、風呂に入っている間にしっかりモバイルバッテリーでもってiPhoneを充電しておきまして、体も心も携帯の充電も回復できました。
入浴が終わると19時前で、もう真っ暗。送迎バスは、地熱谷のところを見たいがために使いませんでしたが、1kmちょっとの距離と、めちゃくちゃ離れているわけでもないので、送迎バスを使うかどうか迷う距離でしたよね。時と場合によるものです。
ところが、行きたかった地熱谷はもう門が閉まっていて行けませんでした。温泉マークは台湾でも健在です。
横の手湯はやっていましたが、源泉は出ていないようです。おかげで熱すぎずちょうどいい温度に感じました。
この後は、暗いながらも意外と夜景が映える、北投の温泉旅館街を巡りながら道を下りました。駅まで徒歩20分くらいです。
このあとは、新北投駅前の魯肉飯チェーン店で魯肉飯を食べた後、空港に向かうこととしました。追加でいろいろ頼んだせいか、払い方が本来のやり方じゃなさそうだったらしく、英語も分からない店員とメモ帳の筆談で意思疎通するのが大変だったです。
連載記事:2024年夏台湾旅行
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